欧州財政問題懸念 vs 米国長期金利上昇
相場変動要因の注目は、欧州の財政問題を受けたリスク回避ムードの円買い(ユーロ売り)の流れに対し、米国長期金利の上昇によるドル買い戻しの展開となっている。前者の背景では、アイルランドのアングロ・アイリッシュ・バンクが政府による最大100億ユーロの追加支援について、欧州連合(EU)から暫定的な承認を得たことが明らかになった上、欧州中央銀行(ECB)が実施した7日物のドル資金供給オペで2行が合計4億3,000万ドルの供給を受けたことが明らかになり、さらに財政が悪化する金融機関があるのではとの思惑が引き金となった。
現状では、アイルランドの財政・金融情勢に対する懸念が再び高まっていることから、アイルランド国債の対独スプレッドが急速に拡大しているが、アイルランド中銀総裁は「アイルランドは問題解決に向かっている」などコメントして火消しに躍起になっている。一方の後者では、景気回復が思うように進まないデフレ経済を立て直すための手段として、米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和政策を打ち出した。既に政策金利は事実上ゼロとなっていることから、11月3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では今後8ヶ月間で総額6,000億ドルもの国債を購入するという大規模な量的緩和を決定している。
その結果、金融(特にスワップ)市場に出回っている大量のドルは株式市場やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場、そして債券市場へ流れたが、債券の買い取りは5年物から7年物などの中期債となることから長期債には買いが入り難く、金利が上昇しているというもの。そのため、米10年債利回りと米30年債利回りが急激に拡大していることから、ある意味で正常とはいえない。
特に今週は米国の10年債と30年債の入札が予定されていたことから、債券相場への注目度は高まっていた。米10年債入札は順調に消化したものの、米30年債入札は不調に終わり金利は上昇している。やはり、お金の流れの基本は「水の流れは上から下へ、お金の流れは金利の低いところから高いところへ」との格言通りである。
スワップ派による為替相場の見通し
今週の為替相場は、ユーロ売り・ドル買いが目立った。アイルランド国債利回りが対独スプレット拡大を背景としてユーロが下落、ドルが主要通貨に対して上昇する展開となった。また、米FRBの第2弾量的緩和策を材料に長期債利回りが急上昇していることや、重要な米経済指標の結果が市場予想を上回りドル買いをさらに後押しした格好となっている。
EUR/USD(ユーロドル)には売り材料で一致するが、欧州周辺国の対独スプレットが拡大し、リスク懸念が生じているにも拘らず、USD/JPY(ドル円)で82円台前半をキープできている。このまま底堅く推移するようであれば、84円台まで上昇する可能性がある。
また、韓国で開催されているG20首脳会合では、経常収支の数値目標導入の合意や声明での為替及び対外不均衡是正に関する部分でも具体的な合意はなく、具体策を欠いた努力目標に終わる可能性があり、為替市場への影響は限定されると思われる。
そのため再び各国経済のファンダメンタルズに判断基準の目が向くと予想される。来週もユーロ売り・ドル買いの展開は継続すると見ているが、週前半の米経済指標には十分注意が必要である。